卑弥呼【前編】~邪馬台国を、餓狼のクニから守れるのか?~

日本には、いっさいの記録がない、弥生時代。
そうした中にあって、中国の書でのみ、存在が分かる女王ヒミコ。

はたしてヤマタイ国とは、どんなクニだったのか?
そして、覇権をはげしく争っていた、クナ国とは?

今回、現時点でわかっている、古代の出来事をもとに、
ものがたり調で、面白く、お伝えして行きたいと思います。

とつじょ畑から出現した金印

ときは江戸時代、1784年。いまでいう福岡県・・
北側の玄界灘に、ニョキッと突きでた、志賀島(しかのしま)という半島に
ジンベエという、お百姓がいました。

ジンベエ
ジンベエ

さてー、きょうも畑作業がんばるべ~!

土をほりかえしていると、その中から、とつじょ
金色の、小さなカタマリが、出てきました。

それは装飾がほどこされ、なにやらフシギな形をしています。
しかも何か、神々しいものさえ、かんじます。

ジンベエ
ジンベエ

こ、これは何だべ?よくわっかんねえが、ただゴトではねえ!

ジンベエは、とうじ一帯をおさめていた、黒田藩に報告しに行きました。

ジンベエ
ジンベエ

きいてくだせえ、オラの畑から、こんなモノが!

黒田藩士
黒田藩士

やや、これは金のカタマリじゃ、それにこの形。
これは、なにか途方もないモノに、ちがいあるまいぞ!

黒田藩士
黒田藩士

・・うむ、よう届けてくれた。われらが大切にあずかるコトといたす!
ぬしにはのちほど、褒美をとらすぞ。

中国の皇帝から、日本の王へ

この金のカタマリ、じつは江戸時代よりさらに、1700年以上もむかし、
弥生じだいに、日本の1地方を支配していた
“奴国”(なこく)という国の王が
中国の超大国、漢の皇帝から、さずけられたものでした。

漢の皇帝
漢の皇帝

そなたは、わが漢の国に属する、奴国の王であると認める!

その証である。金でできたハンコ・・金印でした。

いま、このホンモノは、福岡市立博物館のケースの中にあり
2000年の時をこえ、さんぜんと光り輝いています。

それにしても、この金印は、なぜ海沿いの、こんな場所に埋まっていたのでしょうか?
奴国というのは、どうなったのか?
すべては、いまもナゾに包まれています。

それというのも、とうじ日本には、文字がなく、いっさいの記録が残っていません。
ですから、文字があった、中国の記録書によってのみ、
様子をうかがい知ることができます。

そして漢の国の記録には、たしかに奴国の王に、
金印をさずけたと、書いてあります。

これは、はるか古代、キリストが生まれ、
西暦がはじまって、50年後くらいの
超・古代の出来事でした・・。

日本に誕生した邪馬台国(やまたいこく)

このころ日本は、いくつもの小さな国が、乱立していたと言い
奴国も、その1つであったと、考えられます。

その後100年くらい立つと、各国が覇権を争う、
戦乱の時代となりました。

しかし決着はつかず、どの国も戦争で、荒み切るばかり。
そこで・・それぞれの国の王は、停戦の協定をむすび、
さらに合体し、1つの国をつくることにしました。

この連合国家が、ヤマタイ国といわれています。
そして、男を王にすると、だれがいちばんの権力者なのかと、
すぐ争いがはじまるので、

女性を、最高権力者として、たてまつるコトとしまして、
こうして誕生したのが、女王・ヒミコです。

人々を導いた女王・卑弥呼

ヒミコは山や海や森など、万物を支配する神のお告げや
先祖の霊のコトバを聴くことができる、
神聖なチカラをもった巫女でした。

卑弥呼
卑弥呼

はらえたまえ きよめたまへ・・

トネリ
トネリ

姉上、いや女王ヒミコさま!神はなんと、言っておられますや?

そう尋ねるのは、ヒミコの弟のトネリ。
ヒミコは人前に姿をあらわさず
このトネリが巫女のお告げを聴き、いつも人々に伝えていました。

ヒミコの宮殿まえには、邪馬台国の民があつまっています。
たかい楼閣に、トネリが姿をあらわすと、人々はざわめきます。

ヤマタイ国民
ヤマタイ国民

おおートネリさまじゃー!ヒミコさまのコトバをお聞かせ下されー!!

ヤマタイ国民
ヤマタイ国民

われらの行く末を、おみちびきください!

トネリ
トネリ

われらが豊かになるには、東の地を開拓せよと、神はおおせです!おのおの準備をし、東へ向かうのです!

こうしてヒミコのコトバをもとに、政治が行われ、
国々は1つに、まとまっていました。

宿敵・狗奴国(くなこく)

しかし、邪馬台国には加わらず、むしろ敵対して
脅威を与えていた勢力が、とうじ存在していました。

その名は狗奴国(くなこく)。邪馬台国の南にあったと、いわれています。
なお『狗』という漢字は「犬」をあらわす文字であり
狼や犬を、信仰していた民族であったという、説があります。

狗奴王
狗奴王

邪馬台国をほろぼすのだ!この国の支配者は、われらだ!

両国は、たびたび戦争になっていましたが、狗奴国の強大な戦闘力は
つねに邪馬台国に、脅威をあたえていました。

狗奴王
狗奴王

兵士たちよ!これはイクサではなく、狩りだ!
人を捨て去り、飢えた狼となれ!
ヤマタイの兵士を喰らいつくすのだ!

ヤマタイ軍
ヤマタイ軍

くっ!なんという強さだ!退却・・退却だ!

そして魏の国へ

トネリ
トネリ

ヒミコさま、このままでは、われわれは、狗奴国に滅ぼされます。
なにか救いの道は、ありませぬでしょうか?

卑弥呼
卑弥呼

トネリよ、狗奴国にはヤマタイだけでは、勝てません。
魏(ぎ)の国の、チカラを借りるのです。
ナシメとトシゴリを呼びなさい。かれらを使者とし、魏に送るのです。

魏は、とうじ中国にあった、巨大国家。
すこし前まで、中国は漢王朝が、支配していましたが、

戦乱で乱れ、 三国志の時代に突入。
その3国でも、もっとも大きかったのが、魏の国です。

その最大版図は、134万㎢にも達するともいわれ
いまの日本全土を合わせても、38万㎢ですので・・
比べ物にならないほど大きく、文明も、はるかに発達していました。

しかし、はたして魏の皇帝は、はるか遠方から、
とつぜんやって来る、邪馬台国の使者に
どんな反応を示すのでしょうか?

ちょっと長くなって参りましたので、
続きはまた以下の記事にて、お送りしたいと思います。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

≫魏とヤマタイ国の出会い