![](https://aeroporto-tokyo.com/blog2/wp-content/uploads/2020/09/2151619-1.jpg)
著者が、名だたる声優の大塚明夫さんで、タイトルが『声優魂』
・・と、なれば。
“声優のすばらしさ”や“夢を叶える大切さ”
さぞ、そんな内容で、溢れていると、思われるでしょうか?
ところが・・もし「声優を目指したい」という方が、読んだとき
やっぱり、止めておこう・・と、Uターンする人が、続出してしまう。
そんな内容も含まれた、一冊となっています。
いったい、どういうコトなのでしょうか?
夢を追い求めるすべての人へ
![](https://aeroporto-tokyo.com/blog2/wp-content/uploads/2021/05/声優魂.jpg)
こんにちは。
ぼくは書店でのキャッチコピーに、内容が気になってしまい、本書を手に取りました。
もし声優と言わず、いま何か夢をもっており、かつ・・
それが世間的に“達成は厳しい”と言われがちな、ジャンルの場合、
挑戦するまえに、本書を読まれると、とても良いと思います。
そうした人へ、あたかも語り掛けるような文体で、書かれています。
苛烈で容赦なく・・それでいて、本心からあなたを想う
大塚さんの優しさが、あふれた一冊となっています。
以下、その一部分や、概要について、お伝えします。
声優だけはやめておけ
目次のあと、いきなり以下のようなコトバが、書かれています。
![](https://aeroporto-tokyo.com/blog2/wp-content/uploads/2021/05/IMG_3170.jpg)
「声優になりたい」やつはバカである
ただ、これだけでは、読者サイドも・・
![読者1](https://aeroporto-tokyo.com/blog2/wp-content/uploads/2021/02/2143200-1-150x150.jpg)
逆説的なエールかな?
![読者2](https://aeroporto-tokyo.com/blog2/wp-content/uploads/2021/03/男性上司-150x150.jpg)
ああ、きっと謙虚に、こんな風に言われているんだろう!
とも、受け取れるのですが・・この“バカ”というのは、
ほんとうの意味での“バカ”であり
“おろか者”というニュアンスで、使われています。
そのあと、さらに畳み掛けるように
・才能なき声優は、オトナの玩具で終わる
・無理ゲーというヤツです
というように、声優を目指したい人へ向け
1つ1つ丁寧に、論拠まで挙げて、連続で否定されます。
それでも、這い上がって来ようとする人は
![志望者A](https://aeroporto-tokyo.com/blog2/wp-content/uploads/2021/03/2353365-150x150.jpg)
甘くない世界ってコトですよね?理解しています!
![志望者B](https://aeroporto-tokyo.com/blog2/wp-content/uploads/2021/03/2354456-150x150.jpg)
覚悟はできています!
・・と、食らいついて来そうですが、そのコトさえ、見越して
大塚明夫「いや、あなたの場合、残念だけど・・」
と突き落とす、徹底ぶりです。
あなたの夢は本物?
世間的に夢を持つのは、とても素晴らしい事と、言われます。
小学校の文集などでは、よく“将来なりたいもの”といった内容があり。
「サッカー選手になりたいです!」
「お花屋さんになりたいです!」
と、子ども達が言うと
![先生](https://aeroporto-tokyo.com/blog2/wp-content/uploads/2020/12/2279793-150x150.jpg)
あら、ステキ。〇〇ちゃんなら、きっとなれるわ!
・・と、よろこばれ、応援されるものです。
![](https://aeroporto-tokyo.com/blog2/wp-content/uploads/2020/09/1206972.jpg)
こんなとき「とくに夢はないです」と、現実的なことを答えると
「そんな悲しいこと言わないで、ほら・・何かあるでしょ?」
なんて言われ、残念な雰囲気になることさえ、あります。
TVや新聞でも、折に触れて“こどもが憧れる職業ベスト5”といった内容が、ありますね。
さらには、“あきらめない大切さ”も、語られることが多く
「ムリだ」なんて言う人に負けないで!とも言われます。
では、なぜ大塚さんは、それと真逆のコトを、呼び掛けるのでしょうか?
夢を持とうとする・・その陰には、大きな負の側面も、含まれているからです。
夢を持たないと圧力
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夢を持たないと・・という暗黙の圧力は
ときに“ニセモノの夢”も、たくさん生んで、しまいがちです。
そして深層心理では、その職業そのものが、そこまで好きではないにも関わらず、
じぶんのココロに、ウソをついてしまう人も、大勢います。
ニセの想いに、大切な人生の、時間と労力をさんざん費やしたあげく
挫折して終わりでは、悲しすぎますね。
ちなみに、声優を志望する人の中には
・「あの〇〇さん!」と、ちやほやされたい。
・有名になって、大勢を見返したい。
という思いを持っている人も、多いのですが
大塚さんは「その方が、正直でいいじゃないか!」と語っています。
それを覆い隠して
・そんな、邪まな理由じゃありません!
・みんなにユメを与えたいんです!
なんて、言っていると「いい様に利用されて、終わりだぞ!」と忠告しています。
ほんとうに芝居が好き?
![](https://aeroporto-tokyo.com/blog2/wp-content/uploads/2021/02/2167583.jpg)
なお大塚明夫さんの立場からすれば、声優の志望者は多い方が、得な立場。
「がんばれば、あなた達も目指せますよ!」と言うことも、出来たと思います。
しかし現実は、第一線で活躍できる人は、ごく一握りという事実に加え
そのステージに立ったとしても、次々と競争にさらされ、残酷なレースが待ち受けています。
・そうまでして、本当に演じるのが好きですか?
本書は、そのことを、強く問いかけている気がします。
志望者の“本当の幸せ”のため、あえて現実を語る、
なんて“優しい厳しさ”だろうかと、思わずにはいられません。
大塚明夫の魂の演技
![](https://aeroporto-tokyo.com/blog2/wp-content/uploads/2021/02/1150503.jpg)
なお本書は、声優の職業がどうこうといった、内容のみならず
大塚さんだからこそ語れる、芝居の奥深さについても、たっぷりと語られています。
たとえば、物語の中で“相手を騙そう”としている配役の、
迫真のセリフを、言うとします。
もちろん大塚さんは、ストーリーを理解しているので、それがウソのコトバと、知っています。
しかし作中の人物は、わずかでもウソの雰囲気が、漏れ出ないよう、
じぶんのココロをも『これは真実』と諭した状態で、相手に迫る・・
という、2重心理の演技さえ、出来てしまうと言います。
ほんとうはウソなのだけど、じぶんのココロを騙し、真実であるかのように語る
・・という人物を、演じる。
なんだか、聞くだけで頭が、混乱しそうですが、
ここまでするからこそ、ほんとうの魂が、声に宿ると言います。
深遠で、なんて面白い・・これが、役者の世界なのかと、感じずにはいられません。
ひとたび、この神髄に触れてしまうと
・声が良いと、言われるんです!
・声優の専門学校を、卒業しました!
・・といった、アドバンテージくらいは、
ほんとうに、わずかなものですね。
とはいえ、ハイリスク・ローリターンで、厳しいのが声優の世界。
理不尽で残酷で、大御所でも、明日をも知れない世界。
見た目は華やかでも、いつでも“中の人”は、きびしい・・
それでも演技が、大好きでたまらない、
さらなる物語の場を、追い求めてしまう。
冒頭の“おろかな“バカでなく、真性の“芝居バカ”こそ、最後まで残る。
そんな世界なのだと、感じさせられました。
まとめ
本書は、たとえアニメや声優のファンでなくても、タイトル通り“魂”のこもった
濃い、一冊です。
もし、ご興味が湧きましたら、ぜひ、いちど読んでみて下さい。
ここまでご覧いただき、ありがとうございました。